うつわの世界~廣田硝子のいろいろな酒器~
熱で溶かすことのできる“ガラス”というもの。もしかしたらガラスでつくれないかたちなどないかもしれません。普段「ガラスのうつわって綺麗ね」と眺めている側にとっては、まるできらきらと光る魔法のアイテムにも見えるのです。
廣田硝子に伺っていろいろな作品を見ているうちに、ひとことで酒器といえど、そのかたちの種類の多さ、色はもちろん、ガラスだとわかっていても素材までもが違って見えるから不思議です。
こちらは2オンスのとても小さなグラス。今はここまで小さなグラスはなかなか見当たらず、その薄くて小さな表面にまっすぐつけられた江戸切子の模様に見入ってしまいます。
このグラス、じつは1950年代にアメリカやヨーロッパに輸出していたグラスの復刻版だそう。海の向こうでは、当時ウイスキーのショットグラスとして愛用されていたとのこと。
さて、次にご紹介するのは緑色が目にとまるぐい呑みです。このかたちは見てのとおり“竹”。この竹のかたち、飲み口の部分を斜めにカットしてあることでより“それっぽさ”が出ています。
そして、この緑色がなんとも渋い色というか“和の色”に見えるのです。聞けば、ひと工夫あったそうで…。
通常、ガラス製品は二層になっており、透明なガラスの上に色ガラスを重ねるのですが、その順番だと緑色が濃く出てしまい黒っぽくなってしまったため、緑色のガラスの上に透明のガラスを重ねたのだそう。それが、この美しい色を生み出したのです。
そしてこちらが、その名も『こけしが酒器』。とっくりとぐい呑みのセットです。以前から「ガラスで酒器をつくれないか?」という依頼はあったそうで、それなら使った後も飾っておけるものがいいのでは?ということでつくられたとのこと。
全体につけられている模様は“膠(にかわ)”というもの。結霜(けっそう)ガラスともよばれ昔々の窓ガラスですりガラス的な役割でつかわれていたものです。
面白いのは、ぐい呑みを置こうとするとコロンと少し傾くところ。注いだお酒が揺れるのも風情があり楽しいのですが、じつは底が丸くなることで内側の底が平らになり、こけしの頭としてしっかり安定するという嬉しい結果になったとか。
さあ、酒器のご紹介のラストはビールグラスです。商品名は『おビールグラス』。こちらも復刻デザインで、色はあえて薄黄色にしているそう。
表面のガラスのカットは江戸切子で、ぱきぱきっとあらゆる角度の直線が光を集めています。ただ、内側を覗いてみるとどうも表面は平らではなく凹凸があるというか…もこもことしたカーブが見えるのです。
…ということはつまり、外側も同様にもこもこした表面をカットしたということ。さらに底を見ると水滴がついてもテーブルにつかないよう、細かなカットがほどこされています。廣田硝子の社長でもある廣田達朗氏が「ちょっとやりすぎちゃった」と笑ってしまわれるくらいのこだわり、是非近くで見て・触れてみてほしいものです。
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廣田硝子株式会社
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